「やさしい人」ほど、実は怒りをためやすいという話
「あの人、いつも穏やかだよね」
そう言われる人ほど、実は心の中でひっそりと消耗していることがある。
怒りがないんじゃない。ただ、出せないだけなんです。
「怒れない」と「怒りがない」は、全然違う
穏やかな人を見て、「感情の起伏が少ない人なんだろうな」と思ったことはないですか?
でも、それはたいてい誤解なんですよね。
やさしい人ほど、実はよく傷ついている。よく腹も立てている。ただ、それを表に出すことに、ものすごくブレーキがかかっているだけで。
「こんなことで怒るのは、わたしがおかしいのかな」
「怒ったら、嫌われるかもしれない」
「場の空気が壊れたら、どうしよう」
そういう思考が瞬時に走って、感情を押し込んでしまう。
怒りは消えていない。ただ、見えないところにしまわれているだけなんです。
怒りは「二次感情」だという話
ここで少し、心理学の話をさせてください。
心理学では、怒りは「二次感情」と呼ばれています。怒りの感情が生まれる前には、苦しい・不安・辛いなどのネガティブな一次感情があり、それが二次感情を引き起こす要因になるというものです。
つまり、最初に感じるのは「悲しい」「さみしい」「不安」「怖い」といった感情で、それが表現されないまま積み重なったとき、怒りという形で溢れ出す。
一次感情は早いスピードで二次感情に変わるため、最初に感じた感情は心の奥に押しやられて、自分は怒りしか感じていないと誤解している人がとても多いのです。そして一次感情が大きければ大きいほど、二次感情も大きく表現されます。
参考:怒りは二次感情!怒りの奥にある本当の気持ちとは?|カウンセリングサービス
やさしい人は、この「一次感情」をとても深く感じます。共感力が高いぶん、傷つきやすい。さみしさも不安も、人一倍大きい。
でも同時に、その感情を「出してはいけない」と抑え込んでしまう。
だから怒りも、じわじわとためていくんですよね。
なぜ、やさしい人ほどためやすいのか
これには理由があって、やさしい人は「相手の気持ちを想像する力」がとても高いんです。
怒りそうになった瞬間に、「でも相手にも事情があるかもしれない」「わたしの受け取り方が悪かったのかも」と、すぐ相手側の視点に切り替えてしまう。
共感力が高いことは、本来すごく素敵なことです。でもそれが、自分の感情を後回しにする癖とセットになってしまうと、少しずつしんどくなっていく。
自分のモヤモヤには目をつむって、相手のことばかり考える。
それを繰り返しているうちに、「わたしって何が嫌なんだっけ?」という感覚さえ、薄れてきてしまうことがある。
ためた怒りは、どこへ行くのか
怒りは消えない。出口を求めて、どこかに現れます。
たとえば——
急に何もやる気が出なくなる。ずっと好きだったことが楽しめなくなる。特定の人と話すのが、なぜか急につらくなる。体が重い、眠れない、頭が痛い。
一次感情でいっぱいになったものが二次感情として溢れ出すイメージで、このコップの大きさは人それぞれ。コップが小さいとすぐに一次感情がたまってしまい、怒りっぽい人と認識されることもあります。
そして、ある日突然、小さなことで爆発してしまう。
「なんであんなことで怒ったんだろう」と後悔するけど、実はそれは小さなことじゃなくて、ずっとためてきたものが溢れただけだったりする。
周りから見れば「急に」なのに、本人の内側では「もうとっくに限界だった」ということが、なんですよね。
(※Xで共感を集めている投稿を1〜2件、WordPress投稿時に検索して貼り付けてね)
「怒りをためない」ための、小さな練習
怒りを上手に発散しよう、とか、気持ちをはっきり伝えよう、という話をしたいわけじゃないんです。
まずは、気づくことから始めてほしい。
「あ、今ちょっとモヤっとしたな」
「これ、地味に嫌だったな」
それだけでいい。声に出さなくても、誰かに言わなくても、自分の中でそっと認めるだけで、ずいぶん違う。
心理学では、自分が感じている感情を言葉にする作業を「ラベリング」と呼びます。「腹が立っている」「悲しい気分」「少しイライラする」など、ざっくりとした表現でも構いません。言葉にするだけでも、無意識だった感情を意識に上げる効果があります。
怒りという感情は、悪いものじゃない。「ここが傷ついてるよ」「これは大事にしてほしいよ」という、自分からのサインなんです。
それを無視し続けることが、じわじわ自分を消耗させていく。
やさしい人が、自分の感情を大切にすることは、わがままじゃない。
むしろ、ずっとやさしくいられるために、必要なことだと思う。
あなたの怒りは、ちゃんと存在していていい。
