落ち込んだとき、無理に元気を出そうとしないほうがいい理由
連休明けの月曜日の朝。それから、誰かにひどいことを言われた夜。思い通りにいかなかった帰り道。
そういうとき、「よし、切り替えよう」「落ち込んでいてもしょうがない」「元気出さなきゃ」と、自分に言い聞かせた経験はありませんか。
なのに、頑張れば頑張るほど、なんかよけいしんどくなる。あの感じ。
実はあれ、気のせいじゃないんですよね。
なぜ「元気を出そう」とすると逆効果になるのか
心理学に「感情抑圧」という言葉があります。簡単にいうと、感じている感情を無理に押し込めようとすること。
これ、やればやるほど脳への負荷が増えるんです。「悲しいと思わないようにしよう」と意識すると、脳はその感情をずっと処理し続けなければならなくなる。無理に蓋をしようとするほど、中身が気になってしまう——そんな構造になっている。
アメリカのハーバード大学の心理学者ダニエル・ウェグナーが行った「シロクマ実験」が有名で、「シロクマのことを考えてはいけない」と言われた人ほど、シロクマのことを頭から離せなくなった。感情も同じで、「落ち込んではいけない」と思えば思うほど、落ち込みが意識から離れなくなっていくんです。
参考:ウェグナーの思考抑制実験(Journal of Personality and Social Psychology)
落ち込みは「脳のリセットサイン」かもしれない
そもそも、落ち込むこと自体は悪いことじゃない。
気分が落ちているとき、脳はある種のダウンタイムに入っています。がんばり続けた反動、感情の処理、自分の状態を見直すための時間。そういう機能が働いているサインだとも言える。
落ち込みは、体が「少し休ませて」と言っているサインです。
それを「いかん、早く元気にならないと」と焦って打ち消そうとするのは、発熱しているのに「熱を感じないようにしよう」とするようなもの。原因に向き合わず、サインだけを消そうとしている状態なんですよね。
「受け入れる」ほうが、早く回復する
心理学では「感情受容」という考え方があります。感じている感情を、判断せずにそのまま受け取ること。
「落ち込んでいる自分はダメだ」ではなく、「今、落ち込んでいるんだな」とただ認めること。
これ、シンプルに聞こえるけど、実はすごく大事な違いがある。
感情を受け入れたとき、脳はその感情を「処理完了」に近い状態に持っていきやすくなります。逆に、感情を否定したり抑え込んだりすると、処理が止まったままになって、じわじわ長引くことが多い。
無理に元気を出そうとしないほうが、結果的に早く回復できる。それが感情受容の考え方です。
参考:感情受容と心理的健康の関係(American Psychological Association)
落ち込んでいるときに、本当にやっていいこと
「じゃあ何もしなくていいの?」と思う人もいると思います。
そうじゃなくて、「無理に元気を出そうとしない」の代わりに、こういうことをしてみてほしいんです。
① ただ「落ち込んでいる」と認める
心の中で、あるいは紙に、「今日は落ち込んでいる」と書いてみる。それだけでいい。感情を言葉にする「感情ラベリング」は、脳の扁桃体の反応を和らげる効果があります。
② 「回復しようとしない」時間を作る
何もしなくていい時間を、意図的に持つ。スマホも見ない、SNSも開かない。ただぼーっとする。それは怠けじゃなくて、脳に必要な処理時間を与えることです。
③ しんどい気持ちを誰かに話す(書く)
「大丈夫」と言い続けるのをやめて、「今ちょっとしんどい」と誰かに話してみる。あるいは日記に書くだけでもいい。感情が外に出ると、それだけで少し楽になることがある。
→「大丈夫って言ってしまう自分へ」の記事も参考にしてみてね(公開後にURLを追加)
「早く元気にならなきゃ」は誰の声?
最後に、少し立ち止まって考えてみてほしいことがあります。
「早く元気にならなきゃ」という気持ち、どこから来ているんでしょう。
周りに心配をかけたくない。落ち込んでいる自分はダメだと思いたくない。強くいなきゃいけない、という思い込み。
その声、誰かに言われた言葉が頭に残っていたりしませんか。あるいは、「落ち込んでいる暇はない」と自分に言い聞かせてきた習慣かもしれない。
落ち込むことは、弱さじゃない。感情があるということ、生きているということ、真剣に何かと向き合っているということの証拠です。
落ち込んでいる自分を急いで消そうとしなくていい。ただ、「今、こういう気持ちなんだな」と、そっとそばにいてあげてほしいんですよね。
回復しようとしない時間が、あなたを一番早く回復させてくれるから。
